国立大学法人 豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系プラズマエネルギーシステム研究室の研究成果を基に、「PVSS-03 PVアレイ日射計」が商品化されました。本記事では、その開発経緯や特徴についてご紹介します。
豊橋技術科学大学 プラズマエネルギーシステム研究室の紹介
本研究室は、太陽をエネルギー源とするエネルギーシステムなどの研究を行っています。
国立大学法人 豊橋技術科学大学 電気・電子情報工系プラズマエネルギーシステム研究室
https://www.pes.ee.tut.ac.jp/index.html
同太陽エネルギー変換分室 https://www.pes.ee.tut.ac.jp/renewal/setsubi.html
開発の背景と経緯
日射計には「直達日射量」「散乱日射量」「全天日射量」の3種類があり、中でも最も広く利用されているのが全天日射量を測定する機器です。
従来の全天日射計は、「熱電式(サーモパイル)」や「光電式(シリコンフォトダイオード)」が主流ですが、これらは高性能である一方、高価であるため導入にはハードルがありました。
「もっと安価で使いやすく、必要十分な精度を持った日射計」が求められていました。
そこで目をつけたのが、太陽電池セル(Photovoltaic Cell)そのものを日射量測センサーとして利用するというアプローチです。つまり、発電に用いる太陽電池を、そのまま計測器としても活用するという発想です。
このアプローチは、一見シンプルですが技術的な課題がありました。

日射計ついて詳しい情報は、別のサイトをご覧ください。
開発における課題と解決
開発では以下の技術的課題に直面しました:
・測定精度の向上:新しい測定手法には必要十分な精度かつ安定した出力が求められました。
・温度変化の影響:太陽電池の出力特性は、日射量だけでなく、周囲温度にも敏感に反応します。特に炎天下や冬季など極端な気温下では、同じ日射量でも出力値が変化してしまいます。解決策として、豊橋技術科学大学では、太陽電池セルとサーミスタ素子を組み合わせ、温度変化による出力誤差を従来の7分の1に抑える技術を開発。
新たな研究
豊橋技術科学大学では、この日射計を活用し局地的異常天候の研究も進めています。

局地的異常天候の研究に詳しい情報は、別のサイトをご覧ください。
局地的な豪雨をもたらす線状降水帯などの気象現象を、複数拠点での日射計を含むマルチセンサによる継続的なデータ収集により解析し、雲の挙動や暴風の予測を行い、災害予測や気象モデルの精緻化に貢献しています。また長期的には地球温暖化の影響を研究しています。
PVSS-03日射計の特徴
PVSS-03日射計は、以下の点で従来型日射計にない特長を備えています:
低価格
汎用の太陽電池を活用することで、低価格での提供を可能にしました。
高信頼性
長年使用され信頼性の高い汎用の太陽電池セルを活用することで優れた信頼性を実現しました。
アレイ接続
複数機器を直列接続することで、日陰の影響を除外した正確な測定が可能にしました。

日陰に設置された日射計の測定データは自動的に削除されます。
IoT対応出力 (0~1Vの直流電圧出力)
0~1Vの直流電圧を出力することで、Raspberry Pi、Arduino、M5Stackなどの小型マイコンとのスムーズな連携が可能です。通信機能を備えたこれらの装置と組み合わせることで、容易にIoT化を実現でき、個人用途から大規模システムの構築まで柔軟に対応できます。
PVSS-03日射計の今後の活用
すでに累計5,000台の販売実績を誇り、幅広い分野でご活用いただいています。
今後は、AIやIoTといった先端技術を活用した「スマート農業」へのさらなる展開が期待されており、PVSS-03日射計もその一翼を担う製品として注目されています。
また、ペロブスカイト太陽電池の普及に伴い、小規模な太陽光発電システムにおけるモニタリングや管理のニーズが高まっており、本製品の活用シーンは今後ますます広がっていくと見込まれます
「安価で使いやすく、必要十分な精度を持った日射計」
従来のサーモパイル式やシリコンフォトダイオード式とは異なり、コストと性能のバランスに優れた日射計として、ぜひご検討ください。
三弘 PVSS-03 日射計公式サイト
