日射計(日射センサー)とは
日射計は、太陽からの放射エネルギーを測定するための機器で、気象観測や太陽光発電、農業など幅広い分野で使用されています。

日射計について詳しい情報は、別のサイトをご覧ください。
ISOとは
ISO(国際標準化機構)は、製品やサービスの品質・安全性を保証するための国際的な規格を制定する機関です。ISO規格は大きく以下の2種類に分類されます:
1. マネジメント規格:ISO 9001(品質管理)、ISO 14001(環境管理)など
2. 製品・技術規格:紙のサイズや衣類の表示、光学機器の仕様など、産業製品や測定機器に関する規格。
日射計に関する規格は後者に該当し、「ISO 9060」という規格で定められています。
ISOの現状と動向
ISO 9001(品質管理マネジメント)は、日本国内で最も広く普及しているISO規格の一つです。しかし近年、ISOを取り巻く環境には大きな変化が見られます。
ISO 9001の取得件数は減少傾向に
かつては、ISO 9001の取得が企業の信頼性を示す重要な指標とされ、多くの企業が導入してきました。実際、2006年には国内で約4万2千件の取得が確認されていました。しかしその後、取得件数は減少傾向にあり、2025年には約2万1千件にまで半減すると見込まれています。この背景には、以下のような要因が挙げられます:
- 大手企業によるISO認証の返上
- 国土交通省による建設業の入札条件緩和
- 取得・維持にかかるコストや手間の見直し
このような背景から、企業は「ISO認証が本当に必要か」を再評価する動きが広がっています。
ISO 9060:2018の概要
ISO 9060は、半球太陽放射(全天日射)および直達太陽放射を測定する機器の仕様と分類を定めた国際規格です。測定対象は、0.3μm~4μmの波長範囲にわたる放射で、直達光と散乱光の両方を含みます。
この規格では、性能試験の手順は定めず、試験結果に基づいて機器を分類します。
以下は、ISO 9060:2018の序文です。
太陽エネルギー - 半球太陽放射および直達太陽放射を測定するための機器の仕様および分類
この文書は、約0.3μmから約3μm~4μmのスペクトル範囲にわたって積分された半球太陽放射および直達太陽放射を測定するための機器の分類および仕様を定める。半球太陽放射および直達太陽放射を測定するための機器は、屋内または屋外での性能試験から得られた結果に従って分類される。この文書は、試験手順を規定するものではない。
ISO 9060:2018のクラス分類
ISO 9060:2018では、日射計を以下の3つのクラスに分類しています。
項目 | 解説 | Classs A | Classs B | Classs C |
---|---|---|---|---|
レスポンス時間 | 急激な変化に対する反応時間 | 10秒以下 | 20秒以下 | 30秒以下 |
ゼロオフセット a ゼロオフセット b ゼロオフセット c | 暗所での測定誤差 | ± 7W/m2 ± 2W/m2 ±10 W/m2 | ±15 W/m2 ± 4W/m2 ±21W/m2 | ± 8W/m2 ± 5W/m2 ±13W/m2 |
長期安定性 | 年間での感度変化率[%] | ± 0.8 % | ± 1.5 % | ± 3 % |
非直線性 | 放射照度変化に対する誤差 | ± 0.5 % | ± 1 % | ± 3 % |
方向応答 | 入射角による誤差 | ±10W/m² | ±20W/m² | ±30W/m² |
スペクトル選択性 | 波長による応答のばらつき | ± 0.5 % | ± 1 % | ± 5 % |
温度応答特性 | 温度変化による出力誤差 | ± 1 % | ± 2 % | ± 4 % |
傾斜応答 | 傾斜角による感度変化 | ± 0.5 % | ± 2 % | ± 5 % |
信号処理エラー | アナログからデジタル変換誤差 | ± 2W/m² | ± 5W/m² | ± 10 W/m² |
ISO 9060:2018は、日射計の性能を客観的に評価するための国際基準を提供しており、使用目的に応じた適切なクラスの選定が重要です。
ただし、測定機器に関する技術的な用語が多いため、専門知識がないと判断が難しい場合もあります。
高精度な機器は性能に優れる一方で、コストが高くなる傾向があるため、目的に応じて性能と予算のバランスを考慮した選定が求められます。
クラス別の用途
クラス | 主な用途 |
---|---|
Class A | 高精度な気象観測所や研究機関向け |
Class B | 気象観測所や太陽光発電所や一般的な気象観測用途 |
Class C | 農業や住宅用太陽光発電など、日射量を大まかに測定する用途 |
日射計の選定
ISO 9060規格は、高精度な測定が求められる場面では有効ですが、すべての用途で必須というわけではありません。
日射量を「大まかに把握する」ことが目的であれば、ClassCや非認証製品でも十分な場合があります。
農業用途の場合
日射比例潅水で使用する場合、2MJ/㎡ごとに潅水すると仮定すると、
- 非直線性が0.5%の誤差がある日射計では、1時間51分ごとに潅水
- 非直線性が5%のの誤差がある日射計では、1時間56分ごとに潅水
ことになります。この差が許容できるかどうかが、選定の判断材料になります。
太陽光発電で使用する場合、太陽光発電の年間予想発電量は以下の式で計算されます:
年間発電量(kWh)= H × K × P × 365
H:日射量(kWh/㎡/日)
K:損失係数(75〜85%)
P:システム容量(kW)
日射計の精度は重要ですが、損失係数の幅が大きいため、複数箇所での測定や設置環境の工夫の方が効果的な場合もあります。
< 日射比例潅水の計算 >
実際の日射量300W/㎡とした場合、非直進性が0.5%の日射計を使用する場合、測定値は298.5W/㎡となり、1時間同じ日射量が継続すると積算日射量は1.074MJ/㎡ (298.5W/㎡×3600s=1,074,000J/㎡)になるので、1時間51.6分 ( 2MJ/㎡÷1.074MJ/㎡ = 1.86時間 )毎に潅水することになります。
非直進性が5%の日射計を使用する場合、測定値は285W/㎡となり、1時間の積算日射量は1.026MJ/㎡となり、1時間56分(2÷1.026=1.94時間)毎に潅水することになります。
まとめ
- ISO 9060は日射計の性能を評価する国際規格
- 高精度が求められる場合はClass AまたはBを選定
- 農業や太陽光発電用途ではClass Cや非認証製品でも十分なケースが多い
- ISO認証は安心材料だが、コストとのバランスを考慮することが重要
ISO 9060は日射計選定の指針となる重要な規格ですが、すべての用途において必須ではありません。
目的と予算に応じて、ISO認証の必要性を含めて適切なクラスや仕様を選ぶことが、賢い選定方法と言えるでしょう。
参考URL
京セラ株式会社 "太陽光発電の発電量は?目安や方角・設置角度など発電量を高めるポイントを解説!"
https://www.kyocera.co.jp/solar/support/topics/202403-the-power-generation-amount-of-taiyoko/#anker2