SEM(走査型電子顕微鏡)について
SEM(走査型電子顕微鏡)について
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)は、その頭文字を取って「SEM(セム)」と呼ばれています(以下、SEMと表記します)。
1965年にアメリカで商用機器が登場して以来、SEMは、材料科学、生物学、医学、半導体検査など幅広い分野で利用され、年率4.5~8%の成長が見込まれる、非常に重要な計測機器です。
SEMの特徴
SEMは、従来の光学顕微鏡と異なり、電子ビームを用いて試料の表面を走査し、高解像度かつ立体的な画像を生成します。
高解像度 : ナノメートルレベルの微細構造を可視化
深い被写界深度 : 凹凸や粗い表面も立体感のある画像で再現
倍率範囲 : 20倍~50万倍でマクロからナノスケールまで対応
SEMの原理
SEMの基本構成は以下のとおりです:
- 電子銃:電子ビームを発生させる
- 集束レンズ:電子ビームを絞り込み、試料表面に照射
- 試料ステージ:試料を固定し、角度や位置を調整する
- 検出器:二次電子(SE)・反射電子(BSE)・X線を検出
- 真空チャンバー:電子の散乱を防ぐための真空環境を維持
動作プロセス
1. 電子線の照射:
電子銃で発生した電子ビームを、集束レンズで絞り込み、試料表面に照射。
このとき、試料からは、反射電子、二次電子、X線などの信号が放出されます。
2. 走査と信号の検出
電子ビームを試料表面でグリッド状に走査し、試料から放出された信号を検出器で捕捉します。
3. 画像の生成
検出された信号を、走査と同期させてコンピュータで構成し、高解像度の画像として表示します。
得られる画像の種類
二次電子像(SE) :一般的なSEM画像。表面の微細な凹凸を観察。
反射電子像(BSE):物質の密度や組成の違いを可視化。
X線分析(EDS):元素分析が可能。
SEM(走査型電子顕微鏡)の最新トレンド
走査型電子顕微鏡(SEM)は、小型化、AIによる自動化、高解像度、そして他の技術との統合における進歩により進化を続けています。
SEMは、近年の技術革新によりさらに進化を遂げています。以下に主な動向を示します。
小型化(卓上SEM)
コンパクト設計と低価格化により、小規模な研究室や教育機関での導入が進んでいます。
AIの導入
画像解析、ノイズ除去、欠陥検出、パターン認識などをAIが自動で行い、操作の効率化と精度向上を実現しています。
ハイブリッド化
EDS(元素分析)やFIB-SEM(3D断面観察)などとの統合により、1台で多角的な分析が可能になっています。
高解像度
新型検出器の開発により、分解能やコントラストがさらに向上しています。
in-situ SEM
機械的変形(引張・押込)、熱的変化(加熱・冷却)、電気化学反応(バッテリー劣化など)などが、リアルタイム観察できます。
三弘の引張ステージによる応用例
三弘の引張ステージは、SEM真空チャンバーに搭載可能で、引張試験・押込み試験を実施しながら、in-situで変形過程をリアルタイムに観察できます。